航空機エンジニア KOH’s Room

航空機エンジニアが飛行機のことや思ったことなどを書いていくブログです。

型式証明の取得はなぜ難しいか??

スペースジェット(旧MRJ)の納入がまた遅れてしまいましたね。

とても残念です。

色々な意見があるとは思いますが、1航空機エンジニアとしては何とか型式証明を取得して、事業として軌道に乗っていってほしいと思っています。

 

スペースジェットをずっと悩ませ続けているこの型式証明ですが、そんなにも取得することが難しいものなのか、なかなかイメージが湧きづらいと思いますので、把握している範囲で簡単に説明します。

  

型式証明取得の難しさについてですが、簡単に言えば以下2点と考えています。

  • 型式証明取得方法の正解がないこと
  • 初参入のメーカーであり、実績がないこと

それぞれについて説明します。

 

型式証明取得方法の正解がないこと

 

例えば「安全であることを証明せよ」という要求に対して、

こういう方法でこういうことを示せば型式証明が取得できますよというものが明確には決まっていません。

安全性証明のロジックは自分たちで構築し、そのロジックをもって認証機関を説得し、試験・解析によって実証していかなければいけません。

 

正解がない中で議論を重ねてストーリーを構築しますが、途中段階でそのストーリーの抜け穴に気づき、追加試験や設計変更が必要になるといったことが多々あったのではないかと思います。

 

初参入のメーカーであり、実績がない

 

ロジックに必要なものはエビデンスです。

初参入のメーカーにはそのエビデンス圧倒的に不足しています。

例えば、「飛行中の荷重に耐えうるように設計しなさい」という要求に対して、初参入メーカーは飛行機を自分達で飛ばしたことがないので、飛行中にどの程度の荷重がかかるのか実績として持っていません。

認証機関から「なぜ飛行中の荷重をそう設定したのですか??」と問われた際に、「実際の運航中の飛行機のデータから設定しました」と回答できないわけです。

どうするかというと、事前に多くの解析や試験をしてエビデンスを構築していくことになります。(おそらく)

何をするにもまずエビデンスデータの構築から着手しなければならず、膨大な費用・期間が必要となってきます。

  

 

上述の通り、正解がなくかつ最初の障壁がかなり高いことにより、型式証明取得は困難なのです。

スペースジェットもそこに苦しんでいるのだと考えられます。

 

一方、これは一度経験するとわかるものでもあります。

型式証明取得手順は経験していますし、最初に比べてエビデンスデータがかなりそろってきています。

次からの機体では過去の知見を存分に活用して、スピーディに型式証明取得ができると考えられますので、まずは型式証明を取得して事業として成立していけるように、何とか頑張っていただきたいと願っています。