航空機エンジニア KOH’s Room

航空機エンジニアが飛行機のことや思ったことなどを書いていくブログです。

飛行機の強度要求

こんにちは。KOHです。

 

飛行機に乗って窓から翼を見た時に、「飛んでる時に翼が折れたりしないかな~」って心配になることはありますか??

飛行機の翼が折れるということは重大事故につながりますから、当然不安に思うこともあると思います。

今日は設計者の視点から、飛行機に求められている強度要求について説明したいと思います。

 

飛行機では安全性を保つために、細かく要求が規定されています。

そして飛行機の強度要求としては、以下の2点があります。

  • 有害な残留変形なく、制限荷重に耐えなければならない
    The structure must be able to support limit loads without detrimental permanent deformation. (
  • 終極荷重に少なくとも3秒間耐えなければならない
    The structure must be able to support ultimate loads without failure for at least 3 seconds.

    【参考】
    FAR 25.305 Strength and deformation
    https://www.law.cornell.edu/cfr/text/14/25.305

少し単語が難しいですね。

まず「有害な残留変形なく」とは、飛行安全に全く影響しないようなものは除いて、荷重を取り除いた後はきちんと元の形に戻るということです。

プラスチックの板などを曲げた際、最初の内は元に戻るのですが、あるところを境に折れたまま戻らなくなることがありますよね。(塑性変形と呼びます。)

制限荷重まではこうならないようにしてねということです。

 

次に「制限荷重」とは、運用中に想定される最大の荷重のことです。

言い換えれば、飛行機の一生に一度かかることがあるかどうかの力です。

 

そして「終極荷重」とは、安全を見て制限荷重を1.5倍した荷重のことです。

 

これらを踏まえて簡単に言い直すと、

飛行機は以下のように設計されているということになります。

  • 飛行機の一生に一度あるかないかの力がかかった時でも、元の形に戻る
  • 飛行機の一生に一度あるかないかの力のさらに1.5倍の力がかかった時にも破壊しない

一生に一度の力がかかっても元に戻るように設計されていると聞いて、飛行機が飛んでいる最中に壊れるんじゃないかという気持ち、少しは和らぎそうでしょうか??

 

実際の開発では、解析や全機試験にてこれらの要求が満足できていることを確認し、その機種がエアラインに納入されて皆さんが乗ることになります。

 

次また飛行機に乗る時は、そうやって設計されているんだなと思いながら、空の旅を楽しんでいただけますと幸いです。

 

それではまた。