航空機エンジニア KOH’s Room

航空機エンジニアが飛行機のことや思ったことなどを書いていくブログです。

飛行機の設計で考慮している非常事態

イランでウクライナ機が撃墜されました。

非常に悲しい事件です。

搭乗されていた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

 

現在の飛行機はミサイルに撃墜されても落ちないように設計はされていませんが、考慮している非常事態ケースがいくつかありますので、代表的なものを3つ紹介します。

 

  • 鳥衝突ケース(Bird Strike)

飛行中に機体に鳥が衝突することがあります。

衝突しても問題なく空港に戻ってこられるように、機体構造は鳥衝突に耐えるように設計されています。

また鳥の重量も航空法で規定されています。

 

  • 非常着陸ケース

通常、着陸してブレーキをかけると、慣性力で前側に引っ張られるような力を受けますよね。

例えば胴体着陸などの非常着陸ケースでは、さらに強い慣性力がかかります。

この力によって座席やギャレーなど、機体の中の色々なものが外れて飛んでいってしまうと、機体は無事でも乗員・乗客の被害が大きくなってしまいます。

そこで、このケースについても耐えるべき慣性力が決められています。

前方向に対しては9G、つまりその部材の重量の9倍の力がかかった時にも壊れないようにする必要があります。

 

  • 急減圧ケース(Decompression)

胴体の人が乗る部分は与圧されています。

上空では気圧が下がるので、与圧してできる限り地上に近い環境を再現して、乗客が快適に過ごせるようにするためです。

簡単に言えば、風船を膨らませてその内部にいるような状態です。

その風船に対して、何らかの原因で穴が開いてしまった場合、どうなるでしょうか??

  1. 破裂する
  2. 空気が抜けるが破裂はしない

風船の破裂は飛行機に置き換えると破壊して墜落ですね。

実際の機体では一部に穴が開いても、周りの構造でそれをカバーして、無事に空港まで到達できるように余裕をもって設計しています。

 

以上、飛行機の設計で考慮している非常事態ケースについて、代表的なものを紹介しました。

こういった状況には遭遇しないことが一番です。

ただ、万が一、直面してしまった場合でも予め考慮して設計していますので、パニックになることなく、客室乗務員の指示に従っていただければと思います。